松本ママの『信仰は火と燃えて』より
今回は、「聖別された群れ」の後半になります。
☆
とはいっても、いつまでも一文なしの生活では
何もできないので、みんなで相談して
アルバイトをしようということになったのです。
その時、「くず屋をやったらどうでしょうか」
と提案がありました。
私には娘が二人いますが、下の娘が
鉄くず屋のところにお嫁に行っていました。
それがふと頭に浮かんで、ちょっとみっともないけれど、
自由な時間に働いて自由に伝道するには、
くず屋さんがいいなと思ったのです。
西川先生はそれを聞いて、
「神様の摂理は再創造の摂理だから、
我々人間も新しく造りかえられる。
万物もくずから新しく再生される。
それはいい考えだ、やりましょう」と言われ、
みんなでくず屋を始めることに決まりました。
☆
朝は6時に起きて7時まで礼拝し、
さっと御飯を食べて廃品回収に出掛けます。
みんな仕事着であるもんぺにはきかえ、リヤカーを借りて、
あちらの角、こちらの角と別れていきます。
そして1時か3時ごろになると、みんな
汗をだくだく流して仕切り屋に集まってくるのです。
西川先生は、いつも一番多くて2000円くらいもうけました。
私たちは、どんなに頑張ってもせいぜい800円でした。
☆
もらったお金は全部、会計をやっていた
春日千鶴子さん(現、ロニオン夫人)に預け、
みんなで連れだってそば屋に行きました。
そこで35円のおそばを食べるのです。
いつも麦御飯とみそ汁だけですから、
それがとてもおいしくて楽しみなのです。
舌にとろける甘い味。
もっと食べたくても、一杯で終わりです。
甘いものが好きな人は、
「35円分だけ大福もちが食べたい」と言って、
大福もちを食べました。
☆
それから、二人ずつ組んで路傍伝道に出掛けます。
私は、岩井裕子さんと有楽町に行きました。
裕子さんは高い声で、とても分かりやすい言葉で道行く人に訴えます。
「御通行中の皆様、天来の声に耳を傾けてください。
私は日本を救うジャンヌ・ダルクです。
この滅びゆかんとする日本を救うために、
心を痛め、涙する良心家はいないのですか」。
たくさんの人が集まっている有楽町の駅前で、
18歳の乙女が訴えるのです。
笑って通り過ぎるアベックもあれば、
「ああ、日本に若い乙女の神様がやって来た」
と拝んで行く人もありました。
☆
夕方は、他のキリスト教会の集会へ行ったり、
訪問伝道をしたりして、帰ってくるのは夜の10時ごろです。
それから御飯を食べて、12時まで原理講義の演習をしました。
それで一日のスケジュールは終わりですが、
まだまだみんな寝ようとしません。
それから、西川先生を囲んで天国の話を聞くのです。
私は「先生、霊界が満員になったら
どうするんですか」と聞きました。
ある人は「天国ができたら、おしるこの風呂に
入りたいです」と言うし、
小河原さんは「私はお菓子の家が欲しいの。
柱をとって食べてもまたすぐできるような、
そんなのできますか」と聞くのです。
まるで小さな子供のようです。
先生はあきれて「できますよ」と答えるのです。
私は、理想世界ができたら、羽をはやして
空を飛んでみたいなどと、思っていました。
そうやって話していると、すぐ2時、3時になってしまいます。
翌日はまた同じように仕事に行くのですが、
3時間ぐらいの睡眠でも、毎日が楽しいから疲れないのです。
☆
朝出掛ける時などは、イエス様を中心として、
弟子がぞろぞろまとわりついて歩いたように、
私たちも西川先生を中心として、日焼けした顔に
目をきらきら輝かせて、天国の話や信仰の話をしながら歩きました。
私たちは、この世から全く聖別された小さい群れでした。
先生は、過去の堕落性をみ言(ことば)によって直し、
神の子の権威と品性と実力をもって
人の倍働くようにと、愛と真理で教えてくださるのです。
☆
生活指導も細かく、「髪をとかす櫛(くし)は、
みんなが一つを使うのですから、
あとの人のことを考えて必ず紙でふいておきなさい。
食事をする時は、あとの人のことを考えて食べなさい」
と一つ一つていねいに教えてくださいました。
そして、「神を愛する者は兄弟を愛する。
だから悪いところを見たら、まごころから忠告しなさい」
と兄弟を愛することを教えるのです。
また、先生は、男性や女性を異性として見るのは
心の中に蛇が入っているからだと言って、
みんな兄弟として育てました。
ですから私たちは、お互いに異性としての意識は全くなく、
懐かしい時は抱き合ったり握手したりして、
心の純粋さはまるで子供のようでした。
時には先生は、掃除、洗濯、炊事を
みんな一人でやってくださり、
めんどりがひなを抱くように、温かく、やさしく、
細かく、また厳しく私たちを育ててくださったのです。
そうして生活の訓練、信仰の訓練、祈りの訓練をした上で、
私たちは地方に開拓伝道に行くことになるのですが、
この時は、西川先生と別れるなどとは夢にも思わず、
先生の愛のみ手の中で、幸せな毎日を送っていたのでした。
松本 道子・著(光言社・刊
『信仰は火と燃えて―松本ママ奮戦記―』より)
信仰は火と燃えて 4
聖別された群れ
『信仰は火と燃えて―松本ママ奮戦記―』より)
信仰は火と燃えて 4
聖別された群れ
☆
「ホーム生活の草創期版」と表現したらいいのでしょうか。。。
喜々として、歩んでいる姿が思い浮かびますね。
昔、教会に献身していた方たちは、
松本ママの証しを聞いて、
懐かしい気持ちになったと思います。
24時間、一緒の生活。
まさに、「兄弟姉妹」という関係でした。
イエス様を中心とした弟子たちも、
同じような「ホーム生活」をしていたのだと思うし、
今現在の青年たちにも、受け継がれていることは、
本当に素晴らしいことだな、と思います。。。
※ このブログは、
あくまでも個人の意志に基づいて、書いているものであり、
教会本部の意向とは直接関係がありません。
過去においても、今後においても
全ての責任は私自身に帰属するものであります。
さらに、当ブログの記事に対して
曲解や悪用ととれる引用、
無断転載はお断りいたします。
(善なる目的で使用することに関しては
その限りではありません)
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