入山伝道教育副局長の
世界家庭に掲載された講座の中で、
『走れメロス』についてのお話が
興味深かったので、紹介します。
☆
『走れメロス』に見る「約束」の価値
皆さんは、作家の太宰治をよくご存じでしょう。
彼の代表作『人間失格』では、主人公の
「人間、失格。もはや、自分は、完全に、
人間で無くなりました」という独白に見られるように、
人間の絶望が描かれています。
その一方で、もう一つの代表作である
『走れメロス』には、人間の希望的な側面、
その本質にスポットが当てられています。
物語の概要を紹介します。
☆
『走れメロス』の主な登場人物は、
主人公メロスと親友セリヌンティウス、暴君ディオニス王です。
王は、人間不信から、肉親をはじめ、
次々と罪なき人々を処刑していきました。
その話を聞いた牧者メロスは、義憤に燃え、
王の暗殺を決意して王城に侵入します。
しかし、あっけなく捕まり、死刑に処されることになりました。
義のためには死すらいとわない
強い精神を持ったメロスでしたが、
たった一人の家族である妹の結婚式を控えており、
その前に死ぬわけにはいかないと思いました。
そこで、親友セリヌンティウスを人質にする代わりに、
王様に三日間の猶予を願い出たのです。
王様は、これは逃げ口上で、絶対に帰ってこないだろう。
人間は信じられない存在だということを
民衆に証明するいい機会だ、と考え、これを許可しました。
十里の道を走って帰ったメロスは、
無事に妹の結婚式を終え、安堵します。
その後、王城に戻るまでに、
メロスはさまざまな試練に遭い、
親友と固く交わした約束を破ってしまいそうになります。
☆
第一の試練は「人情」です。
幸せそうな妹の姿を見て、
もう少しここにいたいという人情に流され、
出発するのを躊躇してしまいます。
第二の試練は「疲れ」です。
家で過ごすうちに疲れが出て、眠ってしまいました。
第三の試練は「事情」です。
寝過ごして出発すると、 豪雨で川が氾濫し、
渡れなくなっていたのです。
メロスは、天災だからしかたがないと
諦めかけますが、親友を思い、川に飛び込みます。
第四の試練は「遭難」です。
何とか決意を取り戻し、必死に川を泳ぎ切ると、
そこには山賊がいて、身ぐるみはがされてしまいました。
☆
第五の試練は「限界」です。
メロスはついに疲れ切り、動けなくなってしまいます。
その途端、弱気になるの です。
心の中に、あらゆる言い訳が湧いてきました。
約束を破る心は、みじんもなかった。
動けなくなるまで走ったんだ。
正義だの、信実だの、愛だの、考えてみればくだらない。
人を殺して自分が生きる、それが人間というものだろう。
そんなとき、水の流れる音がしました。
岩の裂け目から水が湧き出ていたのです。
それを飲んで我に返ります。
☆
第六の試練は「説得」です。
再び走り始めたメロスの前に、親友の弟子が現れます。
「もう間に合いません。
やめてください。
あなたまで死んでしまいます」
と呼びかける弟子に向かって、
メロスはこう言いました。
「人の命は問題ではない。
私は、もっと恐ろしくて
大きいもののために走っているのだ」。
試練を乗り越え、メロス は、
自らの命まで捧げようとした行動の原点に帰りました。
☆
裸同然の姿で王城に到着すると、
セリヌンティウスに駆け寄り、
「私を殴れ。私は途中で諦めた。
殴られなければ、あなたを抱擁する資格がない」
と訴えます。
セリヌンティウスはメロスを殴り、こう言います。
「私を殴れ。君を疑った。
殴られなければ抱擁できない」。
メロスも同様に殴りました。
「ありがとう、友よ」。
二人は同時に言い、抱き合って共に泣きました。
その姿を見ていたディオニス王は、
「おまえたちは、私の心に勝った。
私も仲間に入れてくれ」と言い、
集まった民衆は歓喜の声を上げ、万歳をしたのです。
☆
この話はあたかも、サタン屈伏の典型路程である
ヤコブ路程を表しているようです。
信仰の道は、サタンを自然屈伏させるための道であり、
日々の信仰生活は、蕩減復帰のための生活です。
それは、神様との約束を守る生活でもあります。
神様との約束を破って堕落した人間なので、
約束を守って蕩減復帰しなければならないのです。
選民であるイスラエル民族は、
カナンを「約束の地」と呼びました。
神様が、堕落した人間に対して、
天国の実現を約束してくださったのです。
彼らは、見たことも聞いたこともない土地を目指して
荒野を進みました。
その間、 多くの者が倒れていきます。
真のお父様は、
「イスラエル民族が荒野で倒れたのは、
勝利しなければならないという
信念がなかったためである」 (『御旨の道』121ページ)
と説明しておられます。
神との約束は、荒野で出生した
二世たちに受け継がれました。
彼らは、その約束、理想を捨てることなく、
カナン定着時代を迎えました。
私たちは現代の選民です。
理想を決して奪われない、
イスラエル民族の信仰を相続しなければなりません。
私たちに約束された国は、「天一国」です。
そのゴールに到達するまで、
いかなる試練に遭っても、
神様との約束を失ってはなりません。
人情、疲れ、事情、遭難、限界、説得、
あらゆる困難を耐え忍んで信仰を貫くのです。
真のお父様は、神様とイエス様との約束を果たすため、
生涯を捧げられました。
今、真のお母様は、お父様との約束を
成し遂げようとされています。
私たちも、不変の信仰で最後まで約束を守る民となり、
この地に天一国を安着させていきましょう。
入山聖基
中級講座シリーズH
「家庭盟誓(前編)」より
(世界家庭2022年9月号)
中級講座シリーズH
「家庭盟誓(前編)」より
(世界家庭2022年9月号)
☆
「走れメロス」、とても心打たれる名作ですよね。
子供のころ、この本をよく読みました。
メロスは様々な誘惑を乗り越えて、
約束を果たすために果敢に挑戦した姿。
盟友とのやり取りに心を奪われました。
人類は、約束を果たすために復帰摂理を歩んできました。
旧約、新約、そして成約の時代。。。
今は、天一国時代と言われていますが、
それでも神様の約束を果たす歩みをしないといけません。
お世話になっているクリスチャンの方から
「あなたは、神様の約束、人との約束、
どちらを優先しているのですか」
と詰問されたことがあります。
神様を優先するだけではなく、
人との約束を大切にしないと
証しを立てることができません。
内外、公私ともに認められるように、
約束というものを貴重視していきたいです。
※ このブログは、
あくまでも個人の意志に基づいて、書いているものであり、
教会本部の意向とは直接関係がありません。
過去においても、今後においても
全ての責任は私自身に帰属するものであります。
さらに、当ブログの記事に対して
曲解や悪用ととれる引用、
無断転載はお断りいたします。
(善なる目的で使用することに関しては
その限りではありません)
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