やはり拉致監禁を受けたときでした。
愛する父母にみ言葉を伝えることが出来なかった無念さと
もう二度と拉致はしないと
固く約束をしていた父母に裏切られてしまったこと、
そして、私が父母を裏切って教会に戻る道を選んだこと。
中国のような肉体的な迫害はないにしろ、
愛する親とともに寝食をともにしながらも、
親も完全に反対派に委ねてしまっているがゆえに、
本心を伝えることが出来ない苦しさ、
いわゆる「心情の十字架」 の道は、
筆舌に尽くしがたいものがあります。
私は、偽装脱会してから、監禁場所のホテルから、
牧師の教会で寝泊りをすることが決まった日のことを
生涯忘れることが出来ません。
両親は、私が教会を辞めると決まってから、
嬉しくて嬉しくて、仕方がない様子でした。
三人で近くを散歩する時も、両親は本当ににこやかでした。
父と銭湯に行ったとき、
久しぶりに父の背中を流していた時でした。
「 いやぁ、心も体もすっきりするとはこのことだ〜」
久しぶりと書きましたが、
もしかしたら、父の背中を流したのは、
人生、最初で最後だったのかも知れません。
そして、夜も更けた頃、
ぐっすり眠っていた父の枕元にカバンがおいてありました。
よく見ると、メモ帳が顔をのぞかせていました。
何気なく、開いてみてしまったのです。
そこには、牧師との交流の内容や、
私が拉致されてからの様子が綴られていました。
私が偽装脱会をしてからは、
本当に嬉しそうな父の姿が、
言葉に書き表されていました。
そして、最後のページには、
このようなことが書かれていました。
「息子が統一教会を辞めてくれる。
本当に嬉しい。」
この文章を読んだ時、
嗚咽しそうになりましたが、
声を出さずに、涙だけ流しました。
「教会に戻らずに隠れ食口で
家に帰ろうか」
正直に告白すれば、
こんな思いも、わずかながら、
頭をよぎったこともありました。
何故越えることが出来たのでしょうか。
それは私が越えるべき道を先駆けて
乗り越えた方がいらっしゃったからなのです。
明日に続きます。
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