神明先生のエッセイ、今回は、
「あるご子女様との対話:悪をどのように解決するのか?」です。
☆
あるご子女様が1994年の春学期にUTSに入学されたときのことでした。
それは私が総長になる直前でした。
その日は、そのご子女様は私の「キリスト教組織神学」の授業を
受けられた後、教室から出た私を呼び止めて、
次のように言ってこられました。
「あなたは神学者でしょう。
だから、この質問に答えてほしい。
私たちが不十分な人間なので、
私たちの組織の中にさえ悪が起こっているようであるが、
それをどのように解決したらいいですか」
この問題について相当深刻に考えておられたらしく、
真剣なお顔でした。
私もこの問題については自分なりに考えてきたので、
具体的にどのような悪を指しておられるのかを
訊かずとも、すぐにその意味が分かりました。
神学においては、道徳的悪 (moral evil) と自然的悪 (natural evil) の
二種類の悪を考えるのですが、
そのご子女様は、地震やハリケーンなどの自然的悪のほうではなく、
利己主義や権威主義、傲慢、汚職などの
道徳的悪のほうを心配しておられたのです。
それで、私はご子女様の顔を見詰めながら、
泣きそうになってしまいました。
そして、答えをしっかりと書いてさしあげることを約束して、
そこでは別れました。
週末に家に帰ってから、タイプライターに向かって書き始めましたが、
この問題に対する思いが高まり、
神様の臨在を感じつつ、次のように書きました。
☆
「悪をなくす最良の方法は、その悪を行う人を憎まずに
愛をもって接してあげ、その人の所に赴いて、
その悪をあたかも自分自身の悪だと思って背負ってあげ、
責任を持って解決の努力をすることです。
その犠牲的な行為には神様も必ず感動されて、
神様の愛の力が無限に働くようになり、
もはや、この地上では誰もその神様の干渉を
食い止めることができないようになります。
そのようにして悪がなくなり、
その悪を行った人までも変わって行くようになります」
☆
次の週の月曜日にUTSに出勤したときに、
その書いた答えをご子女様に手渡しました。
それを読まれたご子女様はいたく感動されたらしく、
「私はこのような答を今まで聞いたことがなかった。
でも実はこのような答えを知りたかったのだ」
と言われました。
☆
キリスト教でも、今まで悪とは何かという定義は
それなりにされましたが、
悪は消えずに依然として存在する、
という新たな問題にぶつかっていました。
ところが、1970年代頃からようすが変わってきて、
実際に悪をなくすには、その悪の現場に赴いて
責任を持ってそれを背負うという
新しいアプローチが提案されるようになったのです。
それは 「実践的神義論」(practical theodicy) と呼ばれています。
例えば英国の神学者ケネス・スリンによる
『神学と悪の問題』(Theology and the Problem of Evil)という本がそうです。
その本を見つけたとき、私は跳び上がって喜んだものでした。
☆
話を元に戻しますと、そのご子女様は
イーストガーデンにその週末に帰られて、
私との対話の内容を真のお父様に興奮しながら報告し、
私の名前をしきりにお父様に向かって
口にしておられたとのことです。
それが、私がUTS次期総長になるように
お父様が推薦される一つのきっかけになった、
と金孝律先生から後で聞きました。
ドクター神明の信仰エッセー:UTS時代の神体験
神明忠昭
(*ただいま「世界家庭」に連載中です)
神明忠昭
(*ただいま「世界家庭」に連載中です)
☆
神明先生の真摯な信仰と
純粋で温かい心情が、
ご子女様に通じ
それが、真の父母様の耳にまで届き、
この後、UTSの総長になられたわけです。
このようにして悪がなくなっていくと、
断言された神明先生ですが、
これはいつも、学生や教授たちに対しても
そのように実行しておられたからこその
実感のこもった言葉だったことでしょう。
このようにあきらめない姿勢は、
真の父母様の信条にも通じるものがあると思います。
「たとえ だまされたとしても 信じなければなりません。
たとえ 裏切られたとしても 赦さなければなりません。
憎む者までも ことごとく愛してください。
涙を拭いて 微笑みで迎えてください……」
お父様の詩、「栄光の王冠」を思い起こした
今日の証しでした。
神明先生、ありがとうございました。
※ このブログは、
あくまでも個人の意志に基づいて、書いているものであり、
教会本部の意向とは直接関係がありません。
過去においても、今後においても
全ての責任は私自身に帰属するものであります。
さらに、当ブログの記事に対して
曲解や悪用ととれる引用、
無断転載はお断りいたします。
(善なる目的で使用することに関しては
その限りではありません)
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