松本ママの『信仰は火と燃えて―松本ママ奮戦記―』より
今回は、「羊どろぼう」です。
☆
そのころ東京では、西川先生が日本への入国手続きの件で、
入国管理局から事情聴取をされました。
いまだ正式な国交がなかった時代に、天のみ旨を伝えるために、
死を覚悟して玄界灘を越えてこられた先生でしたので、
改めて正式な手続きを必要とされたわけです。
☆
私は大阪でその話を聞き、
“私たちがしっかりしなければ!!”と
心のひもを締め直して、夏の開拓に出発したのでした。
私自身、朝早くから夜12時まで、
訓練に来ている青年を連れて走り回りました。
“電撃のように走りなさい”“電撃のように伝道しなさい”と
柱や壁に書いて教会員たちを刺激し、
私自身が先頭にたって伝道したのです。
☆
1963年から64年の間に、大阪教会は
著しく発展し十数箇所に教会ができましたが、
それらの人々を指導するためには、
まず指導者である私が一生懸命汗を流し、
外に出ていかなければなりません。
ですから、いつも青年たちの先頭に立って、
午前中はくず屋をし、午後は路傍伝道、訪問伝道、
そして夜は他の教会の集会に参加したり
講義をして、休む間もなく働きました。
青年たちも、暑い夏の最中、扇風機もないのに、
みんな苦労しながらよくついてきてくれました。
☆
こうして各地に教会が増えてくると、
関西地区全体が集まる場が必要になってきました。
そこで、月に一度、全支部教会が集まって
大和動会をすることにしたのです。
場所はクリスチャンセンターで、説教、講義、
そして各支部教会から寸劇や独唱など、いろいろな出し物をやり、
にぎやかに心情交流をするのです。
そうして一日中楽しく過ごし、次の和動会の日を楽しみにしながら、
来月は新しいメンバーを何人連れてこよう!
と決意してそれぞれの教会へ帰っていくのでした。
☆
私が大切にしている活動の一つに、
クリスチャンセンターの早天祈祷会がありました。
これには5年間毎週欠かさず参加していたのです。
イエス様は、神が選び導いてこられたイスラエル民族に、
誰よりも先にみ言(ことば)を伝えようとされました。
それと同様に、私は、2千年間殉教の道を歩きながら、
イエス様を愛し、神様を愛してきたクリスチャンに、
一番先にこの「統一原理」を伝えたいと思ったのです。
そうした神様の願いを思う時、どんなにばかにされ侮辱されても、
8回転んでも10回転んでも、11回目には起きて
必ずクリスチャンに伝えてみせるという信念をもって、
頭を下げて毎週祈祷会に通ったのでした。
行くたびにいじめられて、泣きながら帰ることもたびたびでしたが、
それでも忍耐して通い続けていくうちに、
その中から次第に私の話に興味をもち、耳を傾ける人が出てきました。
☆
そうした5年目のある日のこと、
いつものように青年を2人連れて早天祈祷会に行ったところ、
帰りがけにいきなり「松本、マテー!!」
と言って12人の牧師が私を取り巻いたのです。
その牧師たちのただならぬ雰囲気に、
私は恐ろしくて足がぶるぶる震えていました。
150人もいるかと思われる信徒の前に立たされて、
さも審判を受けているような不安に駆られ、
すがるような気持ちで辺りを見回していました。
一緒にいた青年は、私を見捨ててどこかに行って見えません。
私はたった一人でした。
目は意地でもって牧師たちをじっと見ていましたが、
心の中では「天のお父様、急いで来てください。
助けてください」と必死で祈っていました。
☆
その時、一人の牧師が、「お前たちは、朝鮮人、
どん百姓の文鮮明を再臨のメシヤと
信じているらしいじゃないか」と言ったのです。
その言葉を聞いたとたん、それまでぶるぶる震えていた私の心は
キュッと引き締まり、すっかり度胸がすわって
牧師たちを見据えていました。
憤りで髪の毛が逆立つほどでした。
☆
「いいえ、そんなふうには考えていません。
私たちは、文先生をキリスト教会の使命を実現する、
世界でナンバーワンの偉大な指導者と思っています。
聖書に、ナザレからなんのよき者がいずるか、とあるように、
イエス様が生まれたナザレという町は、
東京の山谷のような貧困の町でした。
そこのどん大工の息子を、
あなた方はメシヤと信じているではありませんか。
朝鮮人だ、どん百姓だといって
人間を差別するなんて、牧師にあるまじきことです」
私がこう言い返すと、彼は黙ってしまいました。
☆
すると、今度は他の牧師が、
「この羊どろぼう! お前は人非人だ!」
と言います。
「私はあなたの羊を盗んではいません。
羊を盗んだのは神様です。
神様の言葉です。
あなたがたは羊を預かる牧者であるのに、
羊になんの霊的な糧も与えず、
ひもじい思いをさせていたではありませんか。
苦しんでいる羊が、神様の言葉によって喜びを与えられ、
力を得て私についてきたのです」
☆
「このきちがい女!
この女はクリスチャンの恥さらしだ。
毎日駅前で、世界基督(キリスト)教統一神霊協会なんていう
看板を持って、きちがいみたいに大きな声で叫んでいる」
と、牧師が言いました。
「キリストのため、世のために気が狂わずば
禍(わざわ)いなるかな、とパウロは言っています。
私は、神様のため、キリストのため、
日本を救うために気が狂っているんです。
神様が、やってほしいと言っている声が聞こえてくるんです。
あなた方は、どうして気が狂わないで、
そんなに冷静にしていられるのですか。
あなた方は何もしないで、2千年の殉教者の血の上に
あぐらをかいているではありませんか」
☆
こうして、私は彼らの感情的な攻撃に対して、
一つ一つみ言で答えていきました。
すると群衆の中から、私の背中を
ドンと突き飛ばした牧師がいたのです。
私は振り向いて、
「隠れてそんなことしなくてもいいでしょう。
堂々と出てきて私を殴ってください。
私を殺してもいいですよ。
きょう、私は十字架にかかる用意がありますから。
あなた方は、私が気違いのように
神様を証(あかし)しているのを理由に
私を裁いているのです。
私がここで死んだら、神様とイエス様が証人になってくださるでしょう」
☆
すると他の牧師がまた言いました。
「あんた、統一なんて言っているが、
キリスト教の統一など人間にできるわけがない。
とんでもないことだ」
「そうです。
人間の力でどうして統一できますか。
私は、神様から統一しなさいという命令を受けたから、
その願いに向かって努力しているのです。
『からし種ほどの信仰があれば山動き海に入る』
とイエス様は言われました。
私たちは、神様がこの地上のすべての宗教を統一し、
思想を統一して、世界を神様のもとに
統一するんだという天の啓示を受けたから、
それを信じてやっているのです。
人間の勝手な気持ちでやっているのではありません。
あなた方は長生きして、統一できるか
できないか見ていてください。
神様が共にいれば栄え、いなければ滅びるでしょう」
私はドンと机をたたいて言いました。
☆
すると、
「ああ、分かった。分かったから、
ここでなくてほかのところで神様を証しなさい」
と言うではありませんか。
私の心は、もう義憤でいっぱいでした。
「いいえ、神様が私に、クリスチャンセンターに行って
ラッパを吹きなさいと言っているのですから、
吹かなければ私に責任があります。
私は天から啓示を受けて来ているのです。
あなた方にばかにされても、いじめられても、
あなた方に伝えたくて来ているのです。
私は神様の言うことを聞くべきでしょうか、
あなた方の言うことを聞くべきでしょうか。
判断してください」
私は目から涙をばらばら流しながら訴えました。
☆
そして、「分かった、分かった」と
いい加減な返事をする牧師に対して、
「あなたはイエス様を愛しています。
神様を愛しています。
あなたは私を怒ったり、侮辱したりしていますが、
あなたは本当はそんな人ではありません。
それは、あなたの背後に潜(ひそ)んでいるサタンが言っているのです。
あなたの目はまるで蛇みたいです。
鏡に映して見てごらんなさい」と言ったのです。
☆
するとその時、西村という牧師が、
「まあ松本さん、忍耐してください。
みんなけんかしないでください。
いいじゃありませんか。
松本さん我慢してください」
と言って、
グレープジュースを持ってきてくれたのです。
その牧師は今も健在です。
☆
私は、それを一息に飲んで気を鎮めると
「先生、握手しましょう」と言いました。
ここでけんか別れをしてしまったら、
もう彼らとは永遠に離れてしまいます。
それでは神様の願いに反すると思ったので、
仲直りをしておこうと思ったのです。
「あなた方はイエス様を愛しています。
私もイエス様を愛しています。
イエス様は敵をも愛しなさいと言われました。
私たちは兄弟姉妹じゃありませんか。
仲直りするのはイエス様が願っていることです。
さあ、握手しましょう」
そう言って、みんなの手をとって握手してしまいました。
そして、「けさのけんかはなかったことにしましょう。
西村先生、ありがとうございました」
と、にこにこ笑いながらあいさつをして帰ってきました。
☆
なんという神様の導きでしょう。
門を出ると、今度はうれし涙があふれきて、
「天のお父様、ありがとうございました」
と感謝の祈りをささげつつ、
いつになくさわやかな気持ちで駅へと向かいました。
この日は、電車の中でも教会に帰るまで泣いていました。
この時の人たちは、今でも懐かしく思い出します。
松本 道子・著(光言社・刊
『信仰は火と燃えて―松本ママ奮戦記―』より)
「羊どろぼう」
(blessed lifeより)
『信仰は火と燃えて―松本ママ奮戦記―』より)
「羊どろぼう」
(blessed lifeより)
☆
「烈女(れつじょ)」
この言葉は、松本ママのために
あるのだな、とつくづく実感します。
本当に感動的な証しです。
12人の牧師の迫害にあっても、
怯むことなく、勝利していかれました。
ただ、神様のため、真の父母様のために、
気が狂ったように歩まれた、松本ママでした。
憤怒の思いを牧師にぶちまけていますが、
証しを読みながら、
今の私たちに対して、霊界から叫んでいる、
松本ママのメッセージのようにも感じました。
私の本心に響く証しでした。。。
口先だけで、「頑張ります」
という者にはなりたくない、と思わされています。
※ このブログは、
あくまでも個人の意志に基づいて、書いているものであり、
教会本部の意向とは直接関係がありません。
過去においても、今後においても
全ての責任は私自身に帰属するものであります。
さらに、当ブログの記事に対して
曲解や悪用ととれる引用、
無断転載はお断りいたします。
(善なる目的で使用することに関しては
その限りではありません)
あくまでも個人の意志に基づいて、書いているものであり、
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