故・野村健二先生の1996年の著書、
「神の沈黙と救い〜
なぜ人間の苦悩を放置するのか」より
「まえがき」と「プロローグ」を
お送りします。
☆
神はなぜ人間の苦悩を放置するのか、
神はなぜ沈黙するのか。
今だからこそ、先人たちが問い続けた
歴史的課題に向き合う時かもしれません。
25年以上も前に書かれた本ですが、
読者の皆さんにとって、必ずや
学びと気付きを得られる一冊になることでしょう。
(一部、編集部が加筆・修正)
☆
まえがき
一見すると、世の中には実に不公平なことが多い。
一生懸命努力してもさっぱり報われなかったり、
ひたすら信心しても何の御利益もなかったりする
一方で、適当に面白おかしく遊んでいる人や
悪事を働いているような人のほうが
大もうけをしてのうのうと暮らしていたりする。
そうしたことを目の当たりにすると、
「なんと神は不公平なお方か」
「神はどうして黙ってばかりいるのか」
と文句の一つも言いたくなるのが人情であろう。
あるいは「そもそも神なんていないんだよ」
と開き直る人も少なくないだろう。
本書は、こうしたことに対する
一つの解答を試みたものである。
このテーマは宗教と深くかかわる内容ではあるが、
宗教の外にいる人にも非常に興味深い内容である
と思うので、神学的で、いたずらに綿密な論証よりも、
一般的で分かりやすく読めるようにということを
念頭に置いて論を進めたつもりである。
1996年6月
野村健二
野村健二
☆
プロローグ
神はなぜ「沈黙」するのか?
神はなぜ「沈黙」するのか?
遠藤周作の『沈黙』は今から30年ほど前に書かれ、
映画にもなり、一大ブームとなった作品である。
切支丹弾圧の頂点にあって
神が何も手を差し伸べてくださらないのを見て、
ついに踏絵を踏むに至るいきさつと
心理とが詳細に述べられている
真摯(しんし)な意欲作であった。
だが一体なぜ今「神の沈黙」を取り上げるのか?
☆
歴史上の大きな節目の年、
西暦2000年まであとわずか。
東西の二極対立も東欧・ソ連の崩壊によって
一応解消した。
しかしそれに代わってユーゴ、中東、チェチェンなど、
民族紛争や宗教紛争はいまだ継続し、
むしろ激化している。
日本においては、サリンによる無差別大量殺人が
宗教・真理の名において行われた。
一体神はどこにおられるのか?
大体神はお一人なのか?
イスラエルとイスラムが、あるいは
イスラム同士が双方神の名において
戦争しているのを見ると、こんな疑問さえ胸をかすめる。
☆
ハルマゲドンなどというキリスト教用語が
一般に用いられるようにもなった。
世界最終戦争は米ソの対立の解消によって一応、
決着がついたように思われるがどうなのだろう?
周知のように、ノストラダムスは1999年7月に
世界の破滅の時が来るということを予言している。
☆
世界は今大きく統一の方向と
分裂の方向に動いているように思われる。
そのうちEC(欧州共同体)の統合、
ローマ教皇と正教大主教、ユダヤ教
などとの握手は統合の方向であり、
ソ連やユーゴの分裂はその反対の傾向を示すものであろう。
個人生活の次元では、まだ中高生のいじめによる
自殺が後を絶たない。
エイズでは、非加熱血液製剤によって
血友病患者その他への感染が問題となっている。
就職戦線は依然として超氷河期である。
オーストラリアでは、観光客が34人も
無差別に射殺されたというニュースも入ってくる。
☆
全知全能の神がおられるのなら、
こうした状況をなぜ野放しにして黙っておられるのか。
これが世紀末の世相に対しての偽らぬ感慨である。
どんなに信仰しても、祈っても、さっぱり答えがない。
神や仏などというものは実在しないのではなかろうか。
信仰深い人が自動車の衝突で頭がい骨陥没で
単純な作業しかできなくなったり、
癌(がん)に侵されて40歳足らずで亡くなったり……。
何も悪いことをしていないのに
この人たちだけがなぜ、と思うことも多い。
☆
こういう問題に対して諸宗教はどう答えるであろうか。
西暦2000年はイエス・キリストの生誕から2000年、
釈尊から2500年、今終末・末法の時代といわれ、
新宗教、新・新宗教の勃興を迎え、
第3次宗教ブームといわれるさなかに
オウム事件が起こり、そのとばっちりで
宗教一般の信用も大きく傷つけられた。
本書は、この神の「沈黙」という現象について、
これまでの宗教(主にキリスト教、聖書)の解答を
検証しながら、沈黙の理由についての
新しい解答を提示しようとするものである。
☆
人間は何のために生きているのか?
これは科学によって答え得る問題ではない。
自分で自分を存在あらしめた者がない以上、
人間は自分を存在あらしめた存在、すなわち
神にその意味を問うてみざるを得ない。
その意味からして、神が存在するか存在しないかは、
特定の宗教をもつか否かにかかわらず、
すべての人の根本問題であるはずである。
また、オウム事件の長期にわたる報道によって、
自分が宗教とどうかかわるか、
本物と偽物をどう見分けるかが問われている今、
その宗教がこの神の沈黙の理由について
どう答えているかということが、
一つの重要な判断基準となるであろう。
野村 健二・著
(光言社・刊『神の沈黙と救い』より)
神の沈黙と救い 1
プロローグ〜神はなぜ「沈黙」するのか?
(blessed lifeより)
(光言社・刊『神の沈黙と救い』より)
神の沈黙と救い 1
プロローグ〜神はなぜ「沈黙」するのか?
(blessed lifeより)
☆
遠藤周作の「沈黙」
私も好きな小説のひとつです。
神はいないのではないか。
なんで、困っている時に助けてくれないのか、
沈黙に込められた無念なる思いがあります。
今の私たちの現状に対しても、
同じような思いを持ったりします。
しかし、神はいないのではなく、
沈黙せざるを得ない事情がある、
そのことを訴えかけているのではないでしょうか。
次回からの投稿を楽しみにしたいと思います。
※ このブログは、
あくまでも個人の意志に基づいて、書いているものであり、
教会本部の意向とは直接関係がありません。
過去においても、今後においても
全ての責任は私自身に帰属するものであります。
さらに、当ブログの記事に対して
曲解や悪用ととれる引用、
無断転載はお断りいたします。
(善なる目的で使用することに関しては
その限りではありません)
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