橘幸世さんによるエッセー
「続・夫婦愛を育む」より、
「その名は『和解村』」を紹介します。
☆
四半世紀も前だったかと思います。
『神々の詩(うた)』という民放のテレビ番組がありました。
この紀行番組で、ルワンダを取り上げた回は特殊でした。
☆
1994年、同国大統領が乗った飛行機の撃墜事件を機に、
ラジオで扇動されたフツ族住民が、
ツチ族とフツ族穏健派の近隣者を
手当たり次第に襲って殺害しました。
80万人以上が犠牲になったといわれる
大虐殺のニュースに震撼(しんかん)したのを覚えています。
番組はその後の再生の取り組みを描いたものでした。
私の記憶に残っているのは、虐殺した側の
フツ族の男性が、負傷して何らかの施設の
粗末な小部屋にいるシーン。
施設を切り盛りするのは、見るからに
たくましそうな現地のクリスチャンの女性です。
彼女が一人の少年に、その男性に
食事を持っていくか何かの世話をするよう指示します。
少年はフツ族に家族を殺されたツチ族です。
その関係性を承知の上で、女性は指示をし、
少年は複雑な思いを抱えながらも従います。
「汝の敵を愛せよ」
とは誰もが知るイエス様の言葉ですが、
地獄をかいくぐり生き延びた少年に、
その実践をもって立ち直らせんとする
女性の姿に、大きな衝撃を受けました。
☆
大虐殺から30年、4月6日付の読売新聞に、
現在のルワンダの状況を伝える記事がありました。
ルワンダは、IT(Information Technology)立国として
「アフリカの奇跡」と呼ばれる経済発展を遂げています。
その大きな要因となった一つが、
政府主導の和解政策です。
民族の識別を法で禁止し、差別を撤廃。
12万人以上に及ぶ服役中の加害者を、
社会復興を優先して減刑しました。
減刑の条件は被害者、虐殺の生存者への謝罪です。
当然、謝罪の手紙を受け取っても
被害者の多くは読む気にすらなれません。
そこをキリスト教の牧師たちがサポートします。
被害者の中には、許せないことへの罪悪感から、
やがて受け入れるようになる人もいます。
また犠牲になった家族を「弔いたい」思いから、
加害者に遺体の場所を告白させるため、
謝罪を受け入れることもあるそうです。
☆
加害者は再教育を受けた後、社会復帰します。
政府が創設した「和解村」では、そんな
加害者と生存者が隣り合って暮らしています。
「ご近所さん」として庭仕事や子供の世話で助け合います。
キリスト教系団体も生活面を支援しています。
和解は「作為的」だとの批判や、加害者は
心から悔い改めていない、などの指摘もあることは事実です。
許した被害者の気持ちも揺れることがあるでしょう。
人間の心はそう簡単に割り切れるものではありません。
家族親族が残酷な殺され方をしたのです。
心がついていくにはこの先何十年もかかるかもしれません。
でも、たとえ復興のためだとしても、
これは本当に尊い試みだと私は思います。
天が後押ししたからこそ、ルワンダは
奇跡的復興を遂げたのではないでしょうか。
このままプロジェクトが順当に進むことを祈ってやみません。
この試みの前には、日々の自分の葛藤が
あまりに小さく思えます。
☆
再編集 文責:ten1ko2
「和解村」素晴らしいですね。。。
喜びを感じる時は、ほんの一瞬ですが、
恨みを持ったその思いは
なかなか消えることはありません。
その思いが、心を不憫にし、
病気なども引き起こします。
そういう人たちに愛の投入をすることは
簡単ではありません。
とても学ぶべき教訓であると思うのです。
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