橘先生のエッセイ「夫婦愛を育む」より
「一緒に怒る」です。
☆
わが家の道路の斜め向かいに簡易郵便局があり、重宝しています。
年賀はがきを買い足しに行くと、あいにく先客がいました。
中は幅1メートルほどの狭さですので、密にならないよう
ドアを開けたままにして外で順番を待っていました。
結構時間がかかっています。
そのうち、年配の男性がシニアカーでやってきて、
中に入って奥に一つだけある椅子に座りました
ようやく先の人が終わり、はがきを買えると思ったら、
後から来た男性が涼しい顔をして窓口に立ってしまいました。
驚き、あきれて腹が立ちました。
お年寄りの無謀な行動は時々メディアでも
話題になっていますし、レジで割り込みをされたことも
ありましたが、この時は自分でも意外なほどに
腹立たしさを覚えました
(おまけにこのご老人の要件もなかなか終わらない!)。
疲れていたせいもあるでしょう。
これだけ済ませたら休憩しよう、と少し無理をしていたのです。
夕食時、主人にそのことを話すと、
「それはひどいね!」と言ってくれました。
実は内心「お母さん、そのくらいのことは
大目に見てあげようよ。お年寄りなんだし。
そんなことに相対しちゃだめだよ」
みたいな言葉が返ってくるかな、
と思いながら話していたのです。
アンフェアなことをされた上に、
怒ったことに対してみ言で正され(裁かれ)たら、
ある意味踏んだり蹴ったりです。
でも、「それはひどいね!」のひと言でスッキリしました。
それ以上文句を言い続けることもなく、それでおしまい。
☆
何の時だったか忘れましたが、
「人が怒っているのを見ると、(同じ対象に対する)
自分自身の怒りがそれほど強くならないからね」
といった内容のことを娘が言っていました。
過去に自分にも経験があったので、妙に納得しました。
知人から無神経なことを言われて傷ついた時、
話を聞いてくれた友人がものすごく怒ったのです。
「ひどい! その人はどういうつもりで
そんなことを言うの?!…」
その憤慨ぶりに私の方が「そこまで怒らなくても…」
と思ったほどです。
慰められて、私自身の怒りはずいぶん静まりました。
☆
郵便局の一件の二日後、新聞にタイムリーな記事が載りました。
「グチコレ」という活動をしている大学生たちについてです。
「グチ」は「愚痴」、「コレ」は「コレクション」、収集の意味です。
仏教を学ぶ学生たちが、道行く人たちから不満を聞き取ります。
聞くだけで助言はしません。
個人が特定されない表現で内容をネットで公開しているそうです。
「否定的な印象が強い愚痴を本音と前向きに捉え、
気軽に話せる場や共感できる機会を作りたい」
との狙いで2012年から続けているそうです。
☆
ネガティブなことを聞いて、気持ちがそれに相対し、
いわゆる悪の授受作用をしてはいけませんが、
相手の負の感情を否定して正そうとするのは
賢明ではないかもしれません。
受け止めてもらってスッキリしたら、
人はちゃんと良い方向に向かうようになっていると思うのです。
夫婦愛を育む 177
一緒に怒る
ナビゲーター:橘 幸世
一緒に怒る
ナビゲーター:橘 幸世
☆
「グチコレ」面白い活動ですね。
負の感情をどう受け止めるか、
本当に大事なことだと思います。
受け止める側の器が問われますよね。
良き授受をしていきたいと思うばかりです。
※ このブログは、
あくまでも個人の意志に基づいて、書いているものであり、
教会本部の意向とは直接関係がありません。
過去においても、今後においても
全ての責任は私自身に帰属するものであります。
さらに、当ブログの記事に対して
曲解や悪用ととれる引用、
無断転載はお断りいたします。
(善なる目的で使用することに関しては
その限りではありません)
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