両親と弟の前で原理講義をすることになったのは、
監禁されてから、7日目のことだった。
三人ともメモを持って準備している。
総序の部分をゆっくりと簡単に講義した。
両親は一生懸命メモしている。
どれだけ理解しているのかは、何とも言えないが
とにかく真剣に素直に聞いている。
弟は、的をついた質問をしながら、
理解しようとする雰囲気が伺えた。
「なかなか、面白いじゃない」と私を乗せるような発言をする。
私と弟のやり取りが終わるや否や、
「じゃあ、明日は創造原理をやろう」と父。
聞いた振りをして、早く講義を進めて欲しいという思いが見え見えであった。
翌日は創造原理の講義をした。
だいたい前日と同じように両親は理解しているのかいないのか、
とにかく一生懸命メモをしている。
弟が「宇宙は陽性と陰性の相対的関係によって創られている」という部分に興味を示していた。
両親は聞くには聞いても、質問も何もせず、
とにかく、聞いたことを条件として、先に進もうとしていることがわかる。
「じゃあ、明日また次の講義だね」と父。
結局は、牧師が来ることを前提にして、
お膳立ての如くに私が原理講義をしていることが明白であった。
その後も、堕落論・復帰原理と講義をしていったが、
だいたい両親と弟の様子は同じであった。
ここまで来れば、どのような展開になるのかがわかるので、
私の方から切り出してみた。
「どうせ、牧師が来るんでしょ?」
弟は「牧師さんと会いたい?」
「こういう生活をしていれば、会うことになるんだろうから、仕方ないよな」と私。
「じゃあ、牧師先生を呼んでいいんだね?」
「いいよ」私は(牧師が来るのが)少し早くないかな、と思いつつも頷いた。
やはり、全ては牧師の指示の元でここまで来たわけだ。
12日間、両親と弟、妹、親戚がやってきたが、
最終的に牧師との対決を乗り越えなければここを出ることが出来ない。
どんな牧師なのか、霊的に勝利できるか、
うまく偽装脱会できるだろうか。
ただ祈りつつ、次の日に備えていった。
画像は「ペテロの否認」
カラバッジョ
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